人事担当(採用担当)というキャリアへの道のり。興味があるなら入社前に確認すべきこと。
「人事になるには」について知りたいという要望があったため、記載していく。人事担当になるための話だけでなく、どのような人が求められるか、人事担当として得られる経験など幅広くご紹介をしていく。記事の最後には社会人として働くあなたへオススメする本もご紹介する。
人事担当とリクルーターを理解する
「採用活動に興味があります。」「私も人事になりたいです。」こんな声はよく耳にする。本社で勤務する人事担当者になりたいのか、それとも新卒採用に携わるリクルーターになりたいのか?そのあたりはきちんと理解しているのだろうか?
「とりあえず薬剤師として調剤室にこもるだけではなく、薬剤師以外のことにも携わってみたいんです。絶対にコレでないといけないということはないけど、何か他のこともしてみたいんです。」正直、こういう理由が一番多いのかな?と思っている。
人事担当とリクルーターの違いは?
リクルーターとは比較的若手社員(1~3年目の薬剤師)が抜擢される。薬剤師として働きながら学生に「仕事のやりがい」や「自社の魅力」を伝えるために採用活動を行う。基本的には人事担当者から指名をされたり声をかけられてインターンシップや合同企業説明会に参加する。若手のうちから携われるという良さはあるものの、権限は小さく自分で採用活動の方向性を決めたりすることはできない。
一方、人事担当とは採用活動全般を担当し、リクルーターの選抜や参加イベントの選定、プレゼン内容を考えたり学生対応を日々行う。インターンシップ内容を考え、数字の責任も負う。リクルーターとは携わる業務内容があまりにも異なる。まずは自分自身がリクルーターと人事担当のどちらに興味があるのかをしっかりと考えてほしい。
リクルーターになるのは割と簡単?
先ほどご紹介したリクルーターは割と誰でもできる。希望した全員がリクルーター活動に携われる会社だってある。しかし、仕事の95%以上は「薬剤師」であり、あくまでリクルーター活動は補助的業務に過ぎない。
「弊社ではいろんなことにチャレンジができます。採用活動にも多くの薬剤師が関っています。」このようにアピールしている会社の多くは人事担当ではなくリクルーターの話をしている。人事担当に興味があるのであれば、リクルーターの話ではなく人事の話を聞き出そう。
人事担当に興味があるならこれを確認する
人事担当に興味があるのであれば、いくつか聞かなければならないことがある。会社によっては人事担当になることが無理ゲーだったりする可能性もある。入社後に後悔しないためにもここは抑えておこう。
あなたは薬剤師ですか?
まず聞かなければならないのは人事担当者が「薬剤師」か「非薬剤師」なのかということ。リクルーターは100%薬剤師で構成されている。しかし人事担当は薬剤師である必要はない。
薬剤師だけで人事担当が構成されている会社がある一方で、薬剤師が一人もいない会社も実在する。あなだが人事担当者としてのキャリアを希望するのであればあなたが受けようと考えている会社の人事担当者が「薬剤師」か「非薬剤師」かを聞かなければならない。
人事担当者に一人も薬剤師がいなければ、あなたが薬剤師というキャリアを経て人事担当になる可能性は低いだろう。「薬剤師でも人事担当になる可能性はあるのか?」について知ろう。
現在だけでなく過去についても知る
人事担当の薬剤師比率を知ることが大事だとお伝えした。もし可能であれば現在だけでなく過去の割合についても知っておきたい。(過去に何名程度の薬剤師が人事担当として働いていたか。)
過去には多くの薬剤師が人事担当として働いていたが、今はゼロということであればその理由についても聞こう。会社として経費削減のために薬剤師を人事担当には起用しないということであれば過去の実績があったとしても避けた方が良いかもしれない。
どのようにキャリア形成されるのか?
そもそも、人事担当に限った話ではないが「どのようにキャリアが形成されるのか?」ということを知っておく必要がある。社長の鶴の一声で人事異動があるのか、自己申告制度があるのか、公募制度が導入されているのか?インターンシップや会社説明の機会を利用して「どのように今のポジションについたのですか?」と聞くことができれば入社後のイメージが格段にしやすくなるだろう。
自分の努力でポジションを勝ち取ることができるのか?総合職でなければ出世ができないのか?年功序列か実力主義か?そのようなことを知っていかなければならない。
薬剤師の人事担当がいたとしよう。もしあなたが人事担当としてのキャリアに興味があるのであれば下記のように聞いてみよう。
「どのような経緯で人事担当をすることになったのですか?もともとご興味があったのですか?」
人事担当と言えど自分に興味を持ってもらえると嬉しいもの。喜んで教えてくれるだろう。
リクルーターで頼られる人・頼られない人
一度リクルーターに話を戻す。
リクルーターは比較的誰でもできると書いたが、誰でもリクルーターとして頼られるわけではない。リクルーターとして任命されたにも関わらず、イベントに全く呼ばれない名ばかりリクルーターというものも存在する。
リクルーターでも呼ばれないことはある
リクルーターチームに所属したとしても実はイベントに呼ばれないことがある。リクルーターとして任命をされて喜んでいたのに全然仕事が回ってこない。他のリクルーターはイベントや懇親会、インターンシップに参加しているのになぜか自分には声がかからない。お情けで1度だけ呼ばれて、その後2度と呼ばれないということも実際にある。それはなぜか?
惨めな思いをしないために下記の項目について抑えておこう。
リクルーターの役割を理解する
リクルーターがなぜ必要なのか?を今一度考えよう。人事担当者は基本的にお喋り上手で会社のこともよく理解している。しかし、人事担当者にもできないことはある。「現役薬剤師」「若手薬剤師」という立場で話ができないということだ。人事担当者になってしまうと話の100%を信用してもらうことが極端に難しくなる。学生も人事担当者は「会社のことを良く魅せようとしている」ということを知っているからだ。だからこそ、現場の薬剤師から「リアル」な話をしてもらい、会社の魅力を伝えたいのだ。
会社の悪い部分をいかに伝えられるか
学生は会社の良い部分だけでなく「課題」や「悪い部分」についても知りたいと思っている。だからこそ、リクルーターの責任は大きい。リクルーターは会社に入って良かったギャップや充実した研修制度、職場の雰囲気についてアピールをする。そこで少しだけ会社に入って感じた違和感や今後改善が必要なことについて伝えられると言葉の信憑性がグッと増す。もちろん「どうしようもない問題」を伝えてはいけない。「少し課題として感じているけど、現在会社が改善に向けて取り組んでいること」を伝えられるとベストだろう。
ファシリテーション能力も必要
リクルーターが学生と2人で話す機会は少ない。人事担当が近くで待機している可能性が高い。しかし、ここで人事担当者の手を煩わせずに学生から話を聞きだし、会社のアピールを上手に行っていたらどうだろうか?
人事担当者だって、楽ができるに越したことはない。リクルーターと学生の間で気まずい沈黙が流れないように常に気を張っている。しかし、リクルーターが上手に間を繋ぎ、学生の聞きたいことに答えつつ会社のアピールをしてくれたらどうだろうか。このような人はもちろん「次回もぜひお願いしたい」と声をかけられやすくなる。
こんなリクルーターは頼られなくなる
逆に、学生と沈黙が多いリクルーターは「大丈夫かな?」と心配になる。会社の悪いところを伝えた後にフォローがなかったり、自分なりの目標を持っていないいわゆる「何も考えていない」社員も外されやすい。また、職場を良く魅せようとするあまり過剰にアピールしたり「うちの会社はいつでも有給が取れるよ!」なんて言われるのも実は人事担当者としては嬉しくない。入社後のギャップにつながりかねないためこのようなタイプも敬遠されがちである。
求められる能力は数えきれない
相手の聞きたいことを聞き出す質問能力
伝えたいことを的確に伝える論理的思考力と説明能力
相手の機微な反応を見逃さない観察能力や状況判断能力
また、相手から質問がしやすい雰囲気を醸し出したり、相手に好印象を与える表情の豊かさなども求められる。特に新卒採用では「明るい雰囲気」というものが必要である。
このような能力や素養を兼ね備えているかが、「頼られるリクルーター」と「頼られないリクルーター」のいずれに分類されるかの指標となっている。
人事担当に向いているのはこんな人
薬剤師は人事担当に向いているはず
リクルーターについて様々な能力や素養が必要であることをお伝えした。それらの内容を見て、そもそも「薬剤師」に求められている能力と同様であることに気付いただろうか?相手から本音を聞きだし、的確に解答をしていくのはなにもリクルーターや人事担当に限らず薬剤師として必要な能力に変わりない。そういう意味で薬剤師は人事担当に向いているといっても過言ではないと思う。
リクルーターよりも求められることは多い
もちろん、人事担当はリクルーターより求められることが格段に多くなる。
採用活動の全体像を描く計画力。リクルーターを含めた人の管理を行うマネジメント能力。プレゼンテーションや会社説明資料を作る論理的思考力やデザインセンス。就活サイトやパンフレットでPRをするための文章作成能力。継続的に学生対応を行う忍耐力や学生の顔や名前を一瞬で覚える記憶力。そして、何よりも大事なのは人としての魅力があるかどうか。「人事担当者の方が良くて入社しました」という学生もかなりの割合で存在する。
大概は数名のチームで採用活動を行うため全てのスキルを習得している必要はない。とはいえ、人事担当は花形とも呼べる職種であるため人気が高く、それなりに高い能力が求められる。
会社への満足度が高い人が選ばれる
会社に対して不満を垂れている人を人事担当にする会社はない。会社のことが好きで、本当に会社のことをよく思っている人が選ばれる。各社の人事担当を見て「とても仕事の満足度が高そうだ」と思ったことはないだろうか?
人事担当という仕事が楽しいのではない。その会社で満足している人を人事担当として起用しているから楽しそうに仕事をしているように映るのだ。
人事担当者の役得
人事担当は薬剤師以上に様々な能力が求められる。一方で、薬剤師としては経験できないことができるのも事実。そんなお話も少しだけしてみる。
様々な場所に行ける
大手になると各エリアに人事担当、採用担当が設けられている。しかし、中堅規模以下ではそれほど多くの人事担当がいるわけではないため出張が比較的多い職業といえる。各大学の学内セミナーをはじめ、大学訪問や各種就活イベントへの参加、学生訪問なんかも行う。優秀な学生の場合は遠方であっても会いに行くケースもあり、会社の経費で普段行かないような場所に行けるのは役得ではないだろうか。
懇親会はお仕事
最近は懇親会を開く企業も増えている。昼食のみならず夕食でお酒を飲めることもある。これは好き嫌いがわかれるところではあるが、人と食事をしたりお酒が好きな人にとっては会社のお金でご飯が食べらえるというのは魅力的ではないだろうか?
もちろん、お酒に飲まれて本来の目的を忘れてしまっては本末転倒となるので注意は必要。食事の食べ方が極端に汚い、好き嫌いが多い場合などは学生にあまり良い印象は与えないので注意。
可能性は無限大
人事担当としてのキャリアは様々な経験ができる。そのため、その後についても幅広いキャリアへ進むことができる。
採用計画や全体を俯瞰して物事を進めることが得意であれば経営企画部門に進むことができるかもしれない。人をまとめることが得意であればスーパーバイザーやブロック長などの管理職が適任だろう。デザインやカラーコーディネートで才能を発揮すればデザイン関連の部署に行くことができる。人に伝えることや指導が得意であれば教育部門に行き、ライティングスキルが高ければSNS担当や広報担当への道も拓ける。人事担当は対人業務でありながら社会人として非常に多くの能力が求められる。だからこそ、その後のキャリアも幅広い。あなたの頑張り次第でどのようなキャリアへも進むことができる。
まとめ
人事担当としてのキャリアを考えるのであればまずは「どのような経緯で人事のお仕事をされることになったのですか?もともとご興味があったのですか?」と聞いてみよう。薬剤師が一人も人事をしていない会社は避けた方が無難かもしれない。
そしてなによりも、あなた自身が人事担当者として高いパフォーマンを発揮することができるように上記で述べた内容について少しずつ学んでおこう。社会人1年目はどんなに優秀な人であってもそれほど大きな差というものはない。しかし、その後どのように自己研鑽を行うか、自己学習を継続することができるかによって自分のキャリアの幅が変わってくる。
私は1年目から毎年30~50冊のビジネス書を読み、薬剤師として1~2時間の勉強を欠かさず継続することで同期や少し上の先輩には負けないパフォーマンスを発揮してきた。上司からも認められ、赤字店舗を黒字化することで事績を作った。自分のやりたい仕事をするためには、良いスタートダッシュを切ることが重要だと言える。
1年目の薬剤師が読むべきビジネス書
ビジネス書と記載したがどちらかというと「自己啓発本」というジャンルに近いかもしれない。このタイプの本は早い段階で読んでおくことで同期たちと差別化を図ることができる。30歳や40歳になってから読んでいるようでは残念ながら期待はできない。今までに読んだ中で1年目の薬剤師にお勧めしたい本を3冊だけ選別してご紹介する。どれも良書であり、読みやすいためオススメだ。
結局、先人が「良い」と言っていることを行動に移すことができるか。そこで差が生まれる。聞くだけで行動に移せない人は社会人になってからも結局同期の中で埋もれ、大した成果も出せずに平凡な社会人生活を過ごすことになる。同期から一歩早く抜け出して仕事の楽しさを知りたいのであればこれらの本を読むことを強くお勧めする。
みなさんがこれから薬剤師として、社会人として充実した時間を過ごすための一助となっていれば幸いです。「この部分についてもっと詳しく知りたい」ということでがあれば下のコメント欄より気軽に質問をしてください。コメントで返信するか、新たに記事を書いたり致します。最後までお読みいただきありがとうございました。